「きっともっとずっと聴こう! 15 in 東京」開催レポート
2026年10月25日(日)、国際医療福祉大学三田病院11F三田ホールにて、国際医療福祉大学三田病院および声援隊の共催による「きっともっとずっと聴こう! 15 in 東京」が無事に開催されました。
今回のテーマは「医療×療育~医療機関と療育施設の連携を考える~」。難聴児者やご家族をはじめ、医療・教育・福祉関係者など100名を超える多くの皆様にご参加いただき、大盛況のうちにお開きとなりました。最新の人工内耳医療から当事者・保護者のリアルな声まで、「きこえ」の未来の可能性が大きく広がった当日の様子をお届けします。
きっともっとずっと聴こう! 15 in 東京 開催概要
共催: 国際医療福祉大学三田病院 / 声援隊
【開会式・講演】医療の進歩と「きこえ」の未来
本イベントの総合司会は、自身も難聴の娘を持つ声援隊運営事務局長の遠山紀子が務めました。
開会式は、声援隊共同代表 池田優里による温かな挨拶で幕を開けました。続く講演では、声援隊顧問の神田幸彦先生(医療法人萌悠会 神田E・N・T医院 理事長・院長)を座長に迎え、最前線の医療と療育に関する深い学びが共有されました。
■ 高橋 優宏 氏「人工内耳の進化」
~音を届ける時代から個に寄り添い、人間本来の自然な聴覚を再現する領域へ~
(国際医療福祉大学三田病院 教授 / 聴覚・人工内耳センター 部長)
高橋教授の講演では、約50年にわたる人工内耳の歴史と未来像が語られました。人工内耳は1970年代の「電気で音が感じられるか」という段階から出発し、時代とともに「脳で音を理解する」「残存聴力を残す」「両側人工内耳の普及」へと、治療のゴールそのものが進化してきた背景が示されました。
さらに、三田病院が主導した先進医療データ(36名を対象とした臨床試験等)が実を結び、「一側性難聴への人工内耳適用(2026年3月に保険適用)」という大きな扉が開かれた成果も紹介。人工内耳医療が今や「電気で音を届ける」段階から「人間本来の自然な聴覚を再現する」段階へと進化を遂げていく未来が提示され、会場からは大きな期待の拍手が送られました。
■ 久保田 江里 氏「聴覚という感覚~わたしのきこえ・あなたのきこえ~」
~検査数値を超えた「その人にとっての実際のきこえ」。子どもの自己決定を支える療育~
(国際医療福祉大学三田病院 耳鼻咽喉科 言語聴覚士)
「聴覚の多様性」をテーマとした本講演では、きこえは目に見えないからこそ、客観的な聴力検査(オージオグラム等)の結果と個別の感覚的な理解を掛け合わせた支援の不可欠性を強調。単なる数値だけに頼るのではなく、「その人にとっての実際のきこえ」を丁寧に捉えていく重要性が語られました。
また、保育園や幼稚園、小学校への施設訪問や連絡ノートを通じた継続的な連携の重要性にも言及。座席配置や補聴援助システム(ロジャーなど)の活用において、子ども自身が自立的に選択・決定できるよう周囲が支えていくことこそが「医療と療育を結ぶ具体的な架け橋」になると示し、温かなメッセージとともに講演を締めくくりました。
■ 鈴木 美華 「メディステップ声援隊のご紹介~医療×療育~」
~医療機関のすぐ目の前で支える切れ目ない療育モデル~
(きこえとことば メディステップ声援隊 言語聴覚士)
2026年に開所した「きこえとことば メディステップ声援隊 長﨑ベル(通称:メディ長﨑)」の実践例を紹介。早期発見が進む一方、診断後に通える療育の場が不足する現状に対し、「診断後に適切な療育につながれないお子さんを一人でも減らしたい」という切実な想いから医療法人 萌悠会 神田E・N・T医院のすぐ目の前に拠点を設ける画期的なモデルを構築。医療による聴覚管理と日常の療育をタイムラグなく直結させました。
丁寧な個別聴覚療育や保護者支援、園訪問を展開するほか、ST(言語聴覚士)をはじめとするスタッフの人材育成にも注力。子どもとご家族を地域全体で途切れなく支え続ける新たな「医療×療育連携」の可能性を示しました。
パネルディスカッション
■ 難聴医師・医学生パネルディスカッション「きこえない私たちが医師になる意義と使命」
(ファシリテーター:神田 幸彦 氏 / 登壇者:初期研修医 久保 奬太朗 氏、東海大学医学部 藤本 侑希 氏、東京医科大学医学部 遠山 友梨 氏)
神田先生をファシリテーターに、難聴がありながら医療現場・医学部で活躍する3名の登壇者を招いたセッションを実施。質疑応答の時間では衆議院議員(厚生労働委員会)からの質問を受け、医療現場や社会構造におけるリアルな課題と解決策について議論が交わされました。
- 医療現場での工夫と社会構造における課題
- セルフアドボカシーを胸に、難聴医師・医学生が描く未来と使命
デジタル聴診器や補聴援助システムを活用した臨機応変な工夫が紹介された一方、騒音下や大人数カンファレンスでの聴取の困難さ、病院自体が「きこえる人」前提で設計されている現状を指摘。さらに、医療従事者の間でも人工内耳への理解が十分でないという課題が提起されました。
神田先生は、「人工内耳や補聴器の子どもたちがより活躍できる社会にするためのご提案」というご質問に対して、自身も約150校の学校訪問を通じて啓発を続けている実績から、学校教育や教員養成カリキュラムへ難聴・人工内耳の知識を組み込む重要性を述べ、それを学校で難聴のある生徒に活用し、健聴の生徒にも道徳の授業などで「コモンセンス」として知ってもらうという必要性を共有。
登壇者3名からは「患者さんの表情や仕草にも目を向け、気持ちや生活背景を丁寧にくみ取れる医師を目指したい」(久保先生)、「同じ難聴でも感じ方や困りごとは人それぞれなので、自分の経験だけで判断せず、一人ひとりの話を丁寧に聞くことを大切にしたい」(藤本先生)、「”患者とともに歩む医療人”を目指し、難聴医師としての使命を果たすことに残りの人生を懸けたい」(遠山先生)といった未来への誓いとセルフアドボカシー(当事者としての自己権利擁護スキル)の大切さが語られ、会場に大きな希望を与えました。
保護者体験発表
■ 難聴児保護者体験発表「きこえない我が子を育て、今思うこと」
(難聴児保護者 田仲りさ 氏)
生後1ヶ月での重度難聴の診断から、三田病院での生後9ヶ月での両側同時人工内耳手術、そして生後10ヶ月での音入れ(久保田先生が担当)に至るまでの歩みを共有。人工内耳サウンドプロセッサにあえて目立つ白色を選んだエピソードが明かされ、「見られることに慣れ、わが子に必要なものとして堂々と向き合う」という保護者自身の強い覚悟が伝えられました。
さらに、声援隊が主催する「難聴キッズのママ・パパCAFE」をはじめとするコミュニティに支えられた経験にも言及。社会的な受け入れ環境の壁に直面しながらも、「周囲の力を借りながら一歩ずつ歩んでいきたい」という言葉が語られ、会場に集まった多くの保護者の心を温かく包み込みました。
■ 閉会式 次なる舞台へ
イベント終盤の総括では、会場から寄せられた質疑応答に対する答えとして、神田先生よりカラオケ機器の音声出力をロジャーに繋いで聴取を助ける日常的な工夫が披露され、会場の笑顔を誘いました。
続いて、声援隊共同代表の家住 教志より閉会の挨拶があり、自身の難聴の娘たちを通した経験を踏まえた「きこえにくさに縛られず、周囲を巻き込んで自分らしく生きる」姿勢や、シーアイ・パートナーズを通じた社会資源創出への力強い決意が語られました。
【「きっともっとずっと聴こう!16」2027年7月に札幌で開催決定! 】
詳細は決定次第、公式HPやSNSで順次発信いたします。どうぞ楽しみにお待ちください!
最後はご参加いただいた皆様と賑やかに記念撮影を行い、熱気の中でイベントは閉幕いたしました。ご協力いただきましたすべての関係者の皆様に心より御礼申し上げます。

